第三回インタビュー: 世界銀行 馬渕俊介氏

世界銀行 馬渕俊介氏 インタビュー

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 本インタビューでは、JICA、マッキンゼーを経て世界銀行に勤務されている馬渕俊介氏にお話を伺った。馬渕氏は現在多くの政府、国際機関が最優先・最重要事項としているエボラ出血熱の、世界銀行内の対策チームリーダーとして「世界規模」の課題に取り組まれている。
 馬渕氏は学生時代に文化人類学に出会ったことが、自分のキャリアを考える上での分岐点になったという。旅行などを通じアジア、アフリカ、中米の現地の人々の生活、文化に触れることで、日本人として将来開発に関わるというビジョンが明確になったと馬渕氏は語る。
 本インタビューでは馬渕氏の経歴の中でも、特に日本人学生の関心が高いコンサルティング業界について、そしてエボラ出血熱に対する世界銀行の取り組みの最先端について伺った。最後には日本人留学生に向けてメッセージを頂いた。

1 コンサルタントは問題解決屋さん

・コンサルタントというキャリア 

Q. コンサルタントとはどのようなビジネスですか?

簡単に言えば、経営コンサルタントは問題解決屋さんでしょうか。クライアント会社が経営課題を抱えているときに、課題の特定、根本原因の深堀り、解決オプションの分析・実行などを通じて、意思決定のサポートや改革の推進などを行います。コンサルティングファームに仕事を依頼してくる企業は、、成長過程にあり、さらに成長するために新しいビジネス領域の開拓をしている企業から、業績のV字回復を目指す企業まで様々ですが、共通しているのは、その会社が抜本的な変革期にあることです。。このように「問題解決」をサポートして生計を立てるわけですから、ビジネスとしてお金をバリバリ稼ぎたいというよりも社会問題に関心のある人が多かったですね。マッキンゼーは、問題解決が好きな人、公共マインドを持っている人が集まっているという印象でした。

Q. コンサルティングファームで働くことで得られるスキルは何だと思いますか?

一般に「問題解決能力」と言われると思いますが、問題解決能力といっても、イコール分析力というわけではありません。コンサルティングの依頼は、ある問題に白黒つけてくださいというものだけでなく、一緒に解いて結果を出してくださいという形のものも多いです。前者は分析力や分析から意味合いを抽出する力、コミュニケーション力などがものをいいますが、後者では、突破力―物事をうまく動かすために状況を読んで動かす力や常に先を読んで動く力、逆境の中でもめげない精神力―など、結果をだすための力を身につけることができると思います。例えば、私がマッキンゼーにいたときに経験したオーストリアの鉱山事業の案件では、まさに分析から実際の問題を突破するところまで経験しました。クライアントが新興の企業だったので、長い採掘・加工・発送工程の中で、どの工程の効率が一番悪いか誰もわかっておらず、各部長がお互いを責め合っているような状況でした。そこで、各工程の生産能力を定量化・可視化して、生産目標を妨げている原因を分析し、各部門・現場に責任を落として解決していきました。また、現場マネージャーとは鉱山オペレーションが始まる朝4時前から行動をともにして、効率的なミーティング方法を話し合ったり、マネージャーが信頼を得られるよう、ディレクターの前でマネージャーが輝ける機会を提供したりしました。実際に現場のトラックや掘削機に毎日のように乗りながら作業の効率性やオペレーション上の課題を把握したり、現場のワーカーとの議論も重ねました。経営コンサルタントは、現場の最前線から経営トップまでの間をダイナミックに動き回るので、現場の知見を経営判断に生かすスタイルも、身につけられるように思います。
    

・コンサルに関心のある学生に向けて。

コンサルを目指す学生さんは、考え方の訓練をするといいと思います。問題を特定、構造化して分析を深めるプロセスは特殊はスキルなので、コンサルティング業界に入りたいと思うのであれば、ある程度訓練すると助けにはなると思います。ただ、個人的には、経営コンサルティングが天職になるごく少数の人を除いて、コンサルティング会社に入ることが目的にはなってはいけないと思います。コンサルティング会社は他にやりたいことを成し遂げるために修行をする道場として使わせてもらうのがいいんじゃないでしょうか。自分の仕事人生をどうしたいのか、というビジョンを持たないままコンサルティングの仕事をするのはもったいないと感じます。実際に、自分の仕事人生に関するしっかりとしたビジョンをもっている人は、コンサルティング会社を卒業したあとに、そのスキルを生かしながら、とても面白い仕事をしています。私の場合も、国際開発の業界を変えるために必要なスキルを身につけることを目指してコンサルティング会社の門をたたきました。自分がやりたいことを自分で切り拓くことが、キャリアを考える上で重要だと思います。
    
2 世界銀行でのお仕事について:エボラ対策チーム

Q. エボラ対策チームのリーダーになった経緯を教えてください。

愛娘が生まれて、今後1ヶ月は子育てに専念しようかと思っていた時に、モルジブで休暇中のはずの上司から突然電話がかかってきました。その電話口でエボラのプロジェクトリーダーを依頼され、承諾しました。そのまま上司は休暇を取りやめて帰国し、二人三脚の怒涛の日々が始まりました。私よりもはるかに経験豊富なスタッフがほとんどな中で、私を最重要な仕事のリーダーとして選んでくれたのは、リベリアやシリアレオネの仕事を担当していて内情に詳しく、また過去にナイジェリアでポリオのプロジェクトのチームリーダーとして、緊急の仕事を記録的なスピードで早期解決させたことがあったからだと思います。このようなバックグラウンドがあったため、今回のエボラのように圧倒的なスピードが求められるプロジェクトをリードするのに適した人材としてみてもらえたのだと思います。

Q. 世銀のエボラ対策チームはどのような取り組みを行っているのですか?

エボラ出血熱の感染が広がっている西アフリカ三か国への緊急支援プロジェクトの企画と実施支援です。資金規模は、100億円超から始まって、3ヶ月の間に500億円まで拡大しました。エボラの感染拡大を防ぐための医療体制、予防体制の整備・拡大への資金援助をすることが私たちの役割です。資金援助では、ただ資金を提供するだけでなく、資金が感染拡大防止につながるよう、どの国のどの分野にどのようなやり方で援助をするのが最も早くて効果的か、政府や他の開発機関の情報や知恵を結集しながら決めていくのが世銀が提供できるバリューだと思っています。3か国にわたる資金供与の手続きを行うので、他のプロジェクトより大きな規模で活動しなくてはなりません。さらに、感染拡大を防ぐために、通常より早期に援助を実施しなければなりませんでした。過去に例のない特例をいくつも許してもらい、通常の5~10倍のスピードで最初の資金供与を完了することができました。大規模なプロジェクトで扱う課題も感染防止から感染拡大に伴う食糧不足への対策まで多岐にわたり、チームも100人近くに膨れ上がっていたため、最初はプロジェクト全体の進捗を把握することが困難でした。一方で一日の遅れも許されない状況で、非常に大きなプレッシャーの中での仕事でした。そのため、マッキンゼー組織のオペレーション改善に良く使っていた「ヒートマップ」を利用し、全体の進捗把握とボトルネックの迅速な発見、問題解決に努めました。それぞれのワークストリームの投資完了までのステップを書き切って可視化し、それぞれのステップの担当者を明確にして、予定通りは青、期限が迫ると黄色、期限より進捗が遅れると赤色、というように色分けをしていきました。これを毎日更新することでどこがうまくいっていないかを明確にすることができ、集中的な問題解決が可能になりました。異例のスピードでプロジェクトを進めるために、コンサルタント時代に培ったマネジメントノウハウをフル動員しました。

Q. 問題点、解決が困難な理由は何ですか?

エボラ問題の最も解決が困難なポイントはその複雑性にあると思います。保健医療サービスが未発達の国々でケースが発生してしまったために、感染者を早く発見、隔離して治療することが難しい現状にあります。また現地の人々が持っている習慣や政府サービスへの不信感といった要素も考えなければなりません。例えば、葬儀を行う際に、遺体に触れて哀悼する習慣があったり、外から来て患者の隔離や遺体処理の方法を押し付けるやり方への反発があったりします。。また、感染が首都に広がり、また地方にも拡散しているため、規模が小さなケースを想定した当初の隔離、治療モデルでは対処しきれない状況になってしまっています。コミュニティを主体とした早期発見、隔離、治療のモデルをいかに早く安全に広げていくことができるかが、解決の大きな鍵になっています。

3 留学中の君たちへ

Q. 留学中にしておいた方が良いことは何ですか?

日本社会ではできない突き抜けたことをしてほしいですね。人は経験の幅だけ成長します。大学時代は自由にいろいろなことができるとても貴重な時間なので、キャリアだけを単線的に考えるのではなくとにかく自分の器を広げることを意識した方がよいと思います。そうすることで他の人たちと違う「自分」というものが創られていきます。若いときの突き抜けた経験は、将来必ず自分の糧になり、個性になります。その個性こそが後になってとても重要になります。

Q. グローバル人材とはどのような人だと思われますか?

欧米的な仕事のやり方でも欧米人に勝てることは重要です。一方で、欧米と違う世界の多様な文化の中で自然と受け入れられ、愛されるスキルや性格を持つこともとても重要だと思います。その点、日本人であることはすごい強みになり得ます。責任感の強さ、仕事のきめ細かさ、相手の立場に立って同じ目線で仕事ができることなど、日本人が持っている特質は、グローバルにいい仕事をする上で大きな財産です。また、冷静さ、楽観主義なども特質の一つかもしれません。エボラの仕事は大ピンチも多く、プレッシャーもものすごいですが、そんな中でなぜいつも笑っていられるのか、冷静に仕事ができるのかわからない、と私は皆から不思議がられています。

Q. 生き方として常に意識していることは何ですか?

仕事をする相手一人ひとりの人を見て、その人たちの状況や想いを感じ取りながら仕事をすることです。そうすることは、仕事をうまくすすめる上で大切なだけでなく、仕事に豊かさや喜びを与えてくれます。人の気持ちに応える仕事を重ねていくと、ピンチのときに自分に返ってきます。何かのためというよりも、それが人として大事なことだと私は考えます。

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馬渕俊介氏

東京大学教養学部を卒業後、JICAに入構。ハーバード大学ケネディースクールに留学し公共政策修士号を取得。その後外資系経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーでの勤務、ジョンズホプキンス大学での公衆衛生修士号を経て、世界銀行に入行。現在はエボラ出血熱対策チームのリーダーとしてご活躍されている。
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