リレーメッセージ:日本の国力再生にできること(森本敏様)

日本の国力再生を図るために

今、日本に最も求められることは日本の国力をいかにして再生するかということにあります。

近年、日本の政治・経済・社会が十分機能せず、日本の富裕層の中には資産を海外に出すだけでなく、日本を捨てて海外に移り住む人が出るくらいに日本は日本人から見捨てられつつあります。日本の法人税や遺産相続税が高く、それに失望するためでもないと聞きます。

日本政治がこの数年にわたり、リーダーの交代や政治的迷走状態が続き、さらに経済政策も失敗を繰り返して地方経済は疲弊し、失業率は高く、年金制度は迷走し将来に期待できないという気持ちになる人が多い一方、格差などというけど他国から見ると日本の格差は大したことはなく、餓死者がいるわけでもない社会の中で何とか生きていけるという状態に満足してぬるま湯につかって日々を送る人も多く、若者は海外に留学せず、商社に入っても海外に行きたがらず、日本社会の心地よさに理由なく満足している人が多いことも確かです。

結果として今日、国際社会の中で日本を論じる人は殆どおらず、日本のことが話題になることもないという状況が続いています。ワシントンはその例外的な場所ではありますが、それでもかっての様な状態は見られないという現実の姿を諸兄は良くご承知のことと存じます。日本を追いかけてきた韓国は既に日本を追い抜き、中国の台頭は目覚ましく、中国はその韓国や日本までも追い抜き、日本の姿は見えません。日本がアセアンに大きな影響力を持っていた時代はとっくに終わりました。どうしてこのようなことになるのでしょうか。

ただ、これは現象であって本質的な問題でありません。本質的な問題は日本国の制度と仕組みを変えていく必要があるにも関わらず、それを放置していることにあります。また、日本国を真に愛して、この国を良くしようという真摯な気持ちを持ち、努力する日本人が少なくなっているということにつきます。

こうした日本のあり方を思い知らされる事案が最近になっていくつか発生しました。その第一が昨年以来、東アジアに起きつつある新たなナショナリズムです。昨年末頃からはっきりとしてきたことは中国の指導者交代(2012年)に伴う路線変更の結果として中国が米欧・東南アジア・北東アジア諸国と厳しい競合関係になったことです。このコンテキストにおいて2010年秋には日本と尖閣諸島問題で衝突しました。また、北朝鮮は強盛大国の大門を開く(2012年)機会に、これも指導者交代を予期して韓国に挑発行動を起こしました。2010年3月の韓国哨戒艦「天安」の沈没事件や2010年11月の延坪島砲撃事件はその一例です。これはまだ、続くと思われます。ロシアも2012年に大統領選挙もあり、このところ北方領土を含む極東地域に要人訪問・軍備増強・経済開発・ウラジオストックでのAPEC開催(2012年)など、積極的な対応を示しています。これらの問題の背後にある共通点は領有権・海洋権益・海洋進出ですが、日本は当面の対象となっており、こうした周辺諸国の攻勢に対して外交努力だけでは対応することができない状況も生まれつつあります。

第二が今回の東日本大震災とそれに伴い発生した福島原発事故です。日本の安全神話は崩壊しました。日本人の団結力・思いやり・相互扶助など良い面が見られたことはわずかな救いですが、これで日本は10年位、経済回復が遅れると思います。原発事故はこれからまだどうなるか不透明ですが、その行方によってはエネルギー政策に根本的な見直しを迫られると思います。科学技術を誇る日本の信頼性にも陰りが見えます。何よりも国家としての危機管理能力が疑われつつあります。この震災に政権与党の政治的リーダーシップが見られなかったことは残念でした。

こうした日本国の現状とあり方を見て痛感することがあります。

それは第一に、日本国というのは戦後半世紀、未だに国家利益、国家目標、国家戦略が明確ではないということです。国家安全保障会議もできていません。今回の震災に当たり国家緊急事態基本法はなく、緊急事態の発令さえもありませんでした。結局、これは国家の基本体制ができていないということなのです。

第二は、小選挙区制度と多数政党乱立の性格を持つ政治体制と縦割り体質の官僚制度が相変わらず、そのままであるということです。結果として連立政権の状態や衆・参ねじれ国会から脱却できず、法律はなかなか成立せず、それだけ政治的リーダーシップが取りにくいという状態にあります。その結果、政治主導と言っても、政治家は最後に官僚を頼ってくるということがわかっていますので官僚は政治家を信用しておらず、官僚体質の改善を図ろうとしない。これでは国家緊急の事態には対応できないのです。

第三は、国民と、その総体としてのメデイアの民意が未成熟であり、選挙と言えば知名度の高い内容のない候補だけが当選し、テレビ番組はどこも同じで、本当のことは報道せず、国民はそのメデイアを信じて動くという状態から脱却していないのです。このため民主主義が極めて低いレベルにとどまっていて、ルールを守ることには消極的で、そのくせ、権利ばかりを主張する国民が多いということがあります。

第四に、これが、最も深刻な点ですが日米同盟関係が危機的な状態にあるということです。東アジアの安全保障環境の中で日米同盟に依存しなければ日本は生存できないことは自明の理です。しかし、DPJ政権が誕生してから米国は日本の政権与党を信頼していないと確信します。現総理がいかに日米同盟重視を主張しても、日米関係の実務はそうなってはいないのです。今、日米同盟をつなぎとめているのはM-M関係(米軍と自衛隊の軍・軍関係)にある日米協力です。民主党はそれがわかっていない政治家の大集団です。米国政府のなかにもキャンベル次官補のように、その民主党のやることを評価する人がいるので困っている状態です。

以上の諸点を考慮に入れて米国で研修・勉学に励んでおられる諸兄にお願いしたい点は以下の通りです。

第一は、諸兄たちこそが、これからの日本と日米同盟関係を背負っていく人材であり、その前途に大変な期待を寄せているところです。できれば国際感覚だけでなく米国を通じて国家戦略や安全保障戦略・軍事戦略を学んできてください。できる限りの若い有能な米国人と知遇をえて、将来にわたって真の友人として付き合える関係を構築していただくことが日本国の財産になることを知ってください。

第二は、米国を通じて民主主義の本質を学び、それを日本に帰ったあと活用できるようにして下さい。人間の進む道は途中のプロセスは異なっても、たどり着く先は概ね同じです。結局、国家と国民のために何ができるかということにつきます。米国で研修中に、帰国後の道を模索し手を打ってください。自分の関心を生涯にわたって持ち続け、自分の将来に活用できるようにして下さい。

第三は、日本はアジアの中に生きていく必要があり、その際、どうしても中国と韓国との関係を避けて生きることはできないのです。そうであるとすれば、米国にいる中国人、韓国人の中で長く付き合える人を探し、良い関係を構築することも米国での研修の重要な目的です。

第四は、日米同盟関係の中で自分が貢献できる分野と範囲を良く見極めることです。この見極めに失敗したら米国研修の意味は半減されます。そして、その分野の専門家と米国にいる間によく付き合うことです。生涯にわたって付き合えるようにすることです。米国にいる間に自分のライフワークを探すことです。諸兄のご健闘を祈念します。

2011年4月

拓殖大学大学院教授   森本  敏

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